海外で暮らす友人や交際相手、親族を短期間(90日間以内で)日本へ招待するには、短期滞在ビザという査証を現地の大使館や総領事館へ申請しなければなりません。
そして、日本側から招へい人や身元保証人を立てて外国人を呼び寄せる場合、身元保証人の経済状況が許可・不許可を決定する重要な要素のひとつになります。
この記事では、転職経験のある方が身元保証人を担う際の注意点について解説しています。
この記事の目次
転職経験は審査でどう影響するか
実際の給与額と書類上の給与額がズレる場合に注意が必要です。
身元保証人制度のおさらい
申請人1が無職であったり、安定した職業に就いていない場合、日本側で招へい人・身元保証人を立ててビザ取得を協力するのが一般的です。
ただ、身元保証人は誰でも担えるわけではなく、通常は安定した収入を有する人が保証人を担うこととされています。
また短期滞在ビザの申請において、身元保証人が以前どういった仕事に従事していたかはほとんど考慮されません。あくまでも現在の職業ないし収入額が審査の基準になります。
そして、転職経験が審査に影響を及ぼす主な理由は、この直近年度の所得証明にあります。
直近年度の所得証明とは
雇用されている方が身元保証人を担う場合、原則は市/区役所で取得する課税証明書2が直近年度の所得証明資料に相当します。
なお、この課税証明書には、当該年度の1年前の所得額を証明するという決まりがあります。
課税証明書のルール
仮に2020年度の課税証明書を取得した場合、書面上で証明されるのは2019年中の所得額です。つまり、審査の基準となる所得額に1年分のズレが生じます。
また、2021年4月に課税証明書の発行を依頼すれば、市/区役所でのデータ反映時期の関係から、同じく2020年度のものが最新の書類として発行されます。
転職後の給与が反映されない
結論からいうと、転職後の収入が反映されないまま書類が発行されます。
- 課税証明書の年度2020年度
- 転職した時期2020年1月以降
このケースだと、課税証明には現職の給与は1円も反映されません。
- 課税証明書の年度2020年度
- 転職した時期2019年11月
このケースでは、2ヵ月分(11月と12月)の給与しか反映されません。
添付資料が増える
以上の理由から、転職経験者は申請時に正確な収入が伝わらない場合も多々あります。
もちろん、課税証明書から転職歴は読み取れません。
しかし一部の国・地域3では必須資料として在職証明書の提出が求められており、入社年月日や勤続年数が審査項目に含まれる可能性は十分にあるといえます。
申請時に提出したほうが良い資料
直近の給与明細書や補足説明書を添付すればより親切な書類が完成します。
現在の収入を証明できる資料
最新年度の課税証明書に今の給与が反映されていない場合は、その他の資料で転職後の収入を立証できればベターです。
会社員(派遣社員等含む)が保証人を担う場合は、給与明細書のコピーを準備するのが一般的です。
個々の事情にもよりますが、3ヵ月分の明細添付がひとつの目安になります。
給与明細書の信用力
ただ、給与明細書はあくまでも所属先の企業から発行されるため、市/区役所などの公的機関が発行する各種証明書に比べて書類自体の信用力は低くなります。
そのため、ほとんどの日本大使館・総領事館で給与明細書は収入状況を立証する資料として指定されていません。つまり、源泉徴収票と同様に受理してもらえない可能性があります。
このような門前払いを防ぐためにも、別途補足説明書を作成しておきましょう。
資料提出に至った補足説明書
給与明細書を提出しただけで、通常ここまでの判断は望めません。あなた自身で追加の資料を添付した理由を書面でアピールすることが求められます。
具体的には、補足説明書と呼ばれる書類を作成し、給与明細書と併せて提出します。
補足説明の内容
- いつ今の仕事に就いたのか
- 転職によって課税証明書の金額にズレがある
- 参考としてどんな資料を提出しているのか
- その資料は何を意味しているのか
記載内容に関しては、個々の案件によって大きく異なります。ただ、最低でもこれらの項目は記載するようにしてください。
まとめ
- 課税証明書は転職前の情報が反映されやすい
- 給与明細書等で現在の収入を立証
- 補足説明書の準備・作成
もちろん、給与明細や説明書を添付せずとも許可は下ります。ただ、ほんの少しでも許可の可能性を積み上げていくのであれば、こういった細かい点もぜひ意識しましょう。