海外で暮らす交際相手や親族、友人を短期間(90日間以内で)日本へ招待するには、短期滞在ビザという査証を現地の大使館や総領事館へ申請しなければなりません。
ひとえにビザといっても多くの種類があり、法律上は約30種の類型に分かれています。なお、下記のような内容であれば、一般的に短期滞在ビザを申請・取得するのがセオリーです。
- 来日中に仕事(アルバイト)をさせない
- 観光地巡りや家族紹介などが目的に含まれる
ビザ取得のふたつの方法を知ろう
ネパール人が短期滞在ビザで日本へ入国するには、主にふたつの方法が挙げられます。
- ネパール側主体でビザを取得
- 日本側で協力者を立ててビザを取得
ネパール側主体の申請
来日を希望するネパール人が主体となって短期滞在ビザの取得を狙うのが1の方法です。
この場合、ネパール人は日本側のサポートを受けずに、審査で必要とされる金銭面の保証などを自分自身で担うことになります。
まとめると
預金残高の証明書を用意できる場合や、安定した職業に就いているネパール人に限り、1の方法を用いたビザ取得が推奨されます。
日本側で協力者を立てて申請
しかし、物価の違いや収入状況など様々な理由から、ネパール人が自力でビザを取得するのはハードルが高いのも事実です。
そこで、日本から招へい人や身元保証人を立てて呼び寄せる2の方法が用意されています。
協力者を立てるメリット
この方法であれば、金銭面の保証を日本側で担うことになるため、仮に申請人1が無資力及び無職であってもビザを取得できます。
比較的有利に審査が進む
また招へい人との関係性もアピールできることから、比較的有利に審査が進むとされています。来日するネパール人の代わりに、あなたが書類を準備してあげるイメージです。
あなたが会社員等で安定した収入があれば、身元保証人もまとめて担えます。一人二役もOKです。
身元保証人の責任範囲
原則、身元保証人は法的責任を伴いません。
犯罪に荷担する目的で虚偽申請等をしない限り逮捕されることはなく、申請人(ネパール人)に代わって督促や取り立てを受けることもありません。あくまでも道義的責任2にとどまります。
招待の理由はさまざま
観光や家族紹介のほか、病気の治療や文化体験、日本語学習、慈善活動への参加など、さまざまな目的で短期ビザは利用されています。
ビザと在留資格の違い
入国時に必要なのがビザ(査証)、入国後に必要なのが在留資格、という認識でOKです。
厳密にいうと、日本入国時に空港で「短期滞在ビザ/査証」を提示し、入国が認められたあとは「短期滞在の在留資格」が付与されます。
短期ビザが申請できないケース
原則、短期ビザはネパール国籍であれば誰でも申請できます。ただし、下記の項目に該当する方は申請を断られる場合があります。
- 直近6ヵ月以内で既に不許可になっている
- 別の大使館・領事館で申請が受理されている
- 過去1年間に180日以上滞在している
- パスポートの空白ページが不足している
直近6ヵ月以内に不許可歴がある
前回の申請で既に不許可になっているネパール人の場合、同一目的での呼び寄せは半年間が経過するまで待つ必要があります。
別の大使館等でビザ申請が受理中
原則、2つのビザを同時に申請することは認められません。片方の審査が終わるまで待ちましょう。
過去1年で180日以上の滞在歴
1年のうち180日を既に短期ビザで消費したネパール人も原則待つことになります。俗に180日ルールと呼ばれます。
パスポートのページ不足
2ページ分以上の余白が必要です。不足している場合はネパール側のパスポートを更新してください。
就労ビザ・結婚ビザとの違い
候補としてよく挙がる就労ビザ・結婚ビザ・留学ビザとの違いを説明します。
就労ビザの特徴
通常、就労ビザは雇用元の企業が申請を行います。ネパール人本人が採用内定を得る必要があり、あなたが代わりに申請することはできません。
配偶者ビザの特徴
日本とネパールの両国で婚姻が成立していれば、結婚ビザが申請できます。彼氏彼女の関係、婚約者のケースでは短期ビザを検討します。
留学ビザの特徴
就労ビザと同様、留学ビザも受け入れ先の学校が申請します。ネパール側で入学手続きが進むため、あなたが協力できる余地はほぼないと言えます。
短期滞在ビザの種類
ちなみに、短期ビザにもバリエーションがあり、一次有効:シングルと数次有効:マルチに分かれます。
一次有効は1回限り、数次有効は何度でも入国できるタイプになります。ただ、ネパール国籍の恋人・友人・親族の招待は一次有効(SINGLE)で申請するのが一般的です。
日本入国までの流れ
日本側での書類準備からネパール人が実際に日本へ入国するまでの流れは以下のとおりです。
1 必要書類の検討・取得
2 申請書類の作成
3 完成書類をネパールへ郵送
4 管轄の窓口へ提出・申請
5 ビザ(査証)の発給
6 日本入国・上陸
おおまかに分類すると、日本側・ネパール側で3つずつ、合計6つの手順に分けられます。ひとつずつ順番に見ていきましょう。
参考外務省Webサイトより抜粋
日本側の手続き
まず、今回の申請でどのような書類/資料が必要になるのかを検討していきます。
必要書類を調べよう
ネパール人の短期ビザ取得に必要な書類を一覧にまとめました。各書類について詳しく知りたい方は下記リンクを参照してください。
- 航空券の予約確認書B
- 招へい理由書
- 招へい経緯書(別紙)
- 申請人名簿
- 滞在予定表
- 身元保証書
- 課税所得証明書
- 確定申告書控のコピー
- 会社・団体概要説明書
- 預金残高証明書
- 住民票
- 在職/在籍証明書
- 戸籍謄本
- 各種補足説明書
- 交友関係を証明する資料
- パスポートのコピー
- 在留カードのコピー
B ネパール側/日本側のどちらで準備しても構いません
もちろん、これら以外に個別で求められ得る資料もあり、また紹介しているすべての書類を揃える必要もありません。
ただ基本的には、上記書類の中から申請人(来日を希望するネパール人)や招へい人、身元保証人の関係性や経済事情に応じてピックアップしていくことになります。
申請書類を作成しよう
必要書類はあなたや申請人(ネパール人側)の生活状況や招待の目的、勤務形態などによって枝分かれしますが、書類の組み合わせが確定したあとは、正確に書面を整えていきます。
ネパール人の交際相手・恋人を呼ぶ
婚約者や恋人を日本へ呼ぶための申請は、短期ビザの中でも典型的な事例です。
飲食店や観光先で出会った、またインターネット(SNS)、マッチングアプリなどを通じて知り合ったケースなど事情は様々ですが、一番のポイントは交際歴の立証です。
普段のやり取りの履歴3やふたりの写真などは積極的に参考資料へ組み込みましょう。
ネパール人の親族・家族を呼ぶ
日本人の配偶者として生活しているネパール人が、その親族を日本へ招待するパターンも短期滞在ビザの代表的な申請で、親族訪問という名称が付いています。
この場合は、親族間の法的関係を証明する資料やプライベートでの交流過程が審査のポイントになります。招待に至るまでの経緯や動機を書面にしたためておきましょう。
滞在期間・申請日数について
実際の申請では、15日・30日・90日の3種類の枠に振り分けてビザが発給されます。一般的に、15日枠より30日枠、30日枠より90日枠のほうが審査のハードルは高くなります。
そのため、最初は短い日数で申請しておくことをおすすめします。
その他のポイント
時間をかけて取り組むべきは、招へい理由書の別紙(経緯書)です。自発的に関係性を伝えられるので、許可率の向上が見込めます。
書類をネパールへ郵送しよう
日本側の申請書類が完成したあとは、原本書類一式をネパールに郵送します。ビザ申請人(来日するネパール人)から自宅の住所を教えてもらって、郵送手続きに入ってください。
おすすめの郵送方法
下記にメジャーなサービスを紹介しておきます。
- 日本郵便EMS(国際スピード郵便)
- ヤマト運輸国際宅急便
- DHL(本社:ドイツ)国際エクスプレス
- UPS(本社:アメリカ)国際シッピング
料金やお届け日数を比較検討の上、配送業者を選んでください。なお、数あるサービスの中でも、EMS(国際スピード郵便)の利用者が一番多い印象を受けます。
追跡サービス付を選ぼう
ネパールへは原本書類を送付しますが、まれに郵送事故に遭う方もいます。追跡番号を導入しているサービスを選んでください。
なるべく書類のみを送ろう
申請書類以外のものを同封した場合、税関等の調査を受けやすくなります。
郵送作業が完了すると、日本側での手続きは一旦終了です。お疲れ様でした。
ネパール側の手続き
日本からの申請書類を受け取ったネパール人側の手続きについて説明します。
窓口へ書類を提出しよう
事前にネパール側で準備してもらっていた資料を、日本から届いた申請書類に追加してもらいます。つまり、書類をひとまとめにします。
最後に、査証申請書(ビザ申請書)を清書してもらって、短期滞在ビザの申請書類は完成です。
提出先は現地大使館
あとはこの書類一式を在ネパール日本国大使館へ持参・提出するだけです。証明写真の貼り忘れや受付時間に注意してもらってください。
ビザ・査証を確認しよう
審査期間は申請受理の翌日から起算して5業務日程度、つまり約1週間が一般的とされていますが、実際は参考になりません。
1週間以内に結果が下りる方もいれば、1ヵ月以上かかった事例もあります。原則、ネパールの日本大使館は早期発給を受け付けてくれない4ので、気長に待つしかありません。
ビザ/査証の内容
審査の結果、許可に相当すると判断されれば短期滞在ビザ/査証が発給されます。厳密には、パスポートのスタンプが押されるページに日本国査証(上記画像)が貼り付けられます。
不許可になった場合
繰り返しますが、不許可になってしまった場合は半年間の待機期間が課されるので、向こう6ヵ月間は同一目的での再申請ができません。
こんなスタンプがネパール側のパスポートに押印される場合があります。もしあれば、写真を撮ってもらい、行政書士や弁護士さんに見てもらいましょう。
審査中の面接について
ビザ申請は原則書類審査ですが、まれに面接や電話調査が行われることもあります。
- 双方が知り合った経緯・きっかけ
- 訪日する理由や目的
- 具体的な観光先・宿泊先
- 申請人自身の職業や収入状況
- 招へい人/身元保証人の住所や年齢
- 婚姻意思の有無(恋人訪問の場合),など
上記のような質問項目が想定されます。
面接官が複数同席する場合もあり、時間も数十分から1時間とまちまちです。質問の大部分は申請書類がベースになるので、面接前に記載内容を再度伝えるなどの工夫が求められます。
空港で上陸審査を受けよう
短期滞在ビザ(査証)が発給されたその日から、日本への入国が可能になります。また、ビザには3ヵ月の有効期限が設定されているので、必ず期限内に入国しなければなりません。
上陸審査と滞在日数のカウント
上記の赤枠部分が有効期限日なので、この日までに日本の空港で上陸審査を受けます。
なお、ビザ(査証)自体の残存期間に関係なく、入国した日から滞在日数のカウントが始まるので、急いで来日する必要はありません。
入国拒否もまれにある
短期ビザで入国するネパール人には上陸審査が行われます。通常は問題なく審査を通過しますが、来日目的等に疑いがある場合、まれに入国を拒否されます。
出国期限日も確認しておこう
空港を抜けると、パスポートにこのようなシールが貼られます。Aが入国日で、Bが出国期限日です。オーバーステイには要注意です。
ネパール人の短期滞在ビザの延長
原則、ネパール人の短期滞在ビザの延長・更新は認められておらず、少なくとも下記2点に該当する案件でなければ許可をもらうのは難しいです。
- 人道上の真にやむを得ない事情
- 上記に相当する特別な事情
“特別な事情”には育児のお世話や病気/怪我の治療などが該当します。
よくある質問
依頼者様からよくいただく質問をまとめました。
来日するネパール人について
個別の案件によります。一般的には有利になり得ますが、仕事を終え直近にネパールへ帰国した場合はかえって不利になる場合もあります。
まずいです。ただある程度のリカバーは可能なので、まずは相手に入国拒否期間を聞いてみてください。1年,5年,10年のいずれかを指定されている場合が多いです。
ビザ申請について
再発行不可の書類以外は返却されません。
ごくまれにあります。90日枠で申請し、結果的に30日枠のビザを付与される場合もあります。
安心してください。入国翌日から1日目,2日目とカウントされます。
入国後について
できる場合があります。ただ一度帰国し、新たに結婚ビザを取得し直す方法がスタンダードです。
できません。一度日本から出国すると、新しく短期ビザを申請し直すことになります。
厳密な決まりはありません。ただ3~6ヵ月程度の間隔を空けるよう推奨します。
おわりに
ネパール人の短期ビザ申請について解説しました。ビザ申請は一発勝負なので、ご自身で作成される場合は在ネパール日本国大使館や外務省の相談窓口を利用してください。無事にビザが発給されることを願っています。
行政書士ループ法務事務所では短期滞在ビザや結婚ビザを主に取り扱っています。初回お問い合わせ時から有資格者が対応しますので、お話しできることをお待ちしております😊