海外で暮らす交際相手や親族を短期間(90日間以内で)日本へ招待するには、短期滞在ビザという査証を現地の大使館や総領事館へ申請しなければなりません。このビザは俗に短期ビザ・観光ビザとも呼ばれています。
そして短期滞在ビザの取り扱い上、下記のいずれかが認められると、例外的に延長(更新)許可が与えられます。
- 人道上の真にやむを得ない事情
- 上記に相当する特別な事情
今回の記事では、短期ビザの延長・更新申請で求められ得る申請理由書の書き方をテーマに解説していきます。
この記事の目次
理由書のおさらい
名前のとおり、理由書とは「短期滞在ビザの延長を希望する理由」について記述した書類のことをいい、理由書の他にも申請理由書、在留期間更新許可申請理由書といった名称で呼ばれています。
日本に入国してから現在までの活動を説明する資料(書式自由)
法務省のWEBサイトにも延長・更新申請の必要書類としてこのような記載があり、上記資料も理由書を作成する根拠のひとつと解されます。
しかし、この書式自由という表記が厄介で、入国管理局でも理由書の書き方は公表されていません。そのため、作成にあたっては字数や書き出し、主張すべき項目についてご自身で考えながら書面を構成していくことになります。
ここまでが作成に入る前のおさらいです。次の章からは、そんな理由書の書き方について意識したいポイントを紹介していきます。
理由書の書き方
親族訪問ビザの延長・更新申請
こちらが実際の延長・更新申請で提出する「理由書」の見本です。
なお、延長理由は主に「病気の治療」などが具体例として挙げられますが、今回はご相談の多い親族訪問ビザの延長・更新申請をベースに解説します。
- 申請人延長を希望する外国人(招へい人の親族)
- 招へい人あなたの配偶者
- 身元保証人あなた(日本国籍)
上記のような組み合わせを想定しながら読み進めてください。
それでは、(1)から(8)まで番号をふっていますので、ひとつずつ確認していきましょう。
(1) 管轄入国管理局
滞在先を管轄する入国管理局の名称を記入します(原則)。
なお、申請人(来日している外国人)は短期ビザ取得時の招へい人/身元保証人の自宅に滞在しているケースが多いと予想されるので、その場合は下記を参考にしてください。
- 千葉県内に滞在“東京”入国管理局長殿
- 岡山県内に滞在“広島”入国管理局長殿
- 熊本県内に滞在“福岡”入国管理局長殿
(2) 作成年月日・申請人の署名
赤枠の中に申請人(来日している外国人)の署名/サインが必要です。日本側協力者や身元保証人(あなた)の署名ではないので注意してください。
(3) 申請の概要
最初の段落で、今回の延長・更新申請の概要を簡潔に記載します。
- 申請人の名前(私は**です)
- 「短期滞在」在留資格を保有していること
- 在留期限はいつまでか
- 在留期間の更新を希望していること
最低でも上記4点は伝えておきましょう。なお在留期限に関しては、申請人のパスポートに貼り付けされている証印(下記画像)が参考になります。
(4) 登場人物の紹介
このセクションから本格的に文章を練っていくことになりますが、まず気をつけるべきは文中の主体(主語)です。延長・更新申請は申請人(来日している外国人)本人が在留を希望するかたちをとるため、申請人側から見た事情や経緯の説明が望ましいです。
文中の“私”=“申請人”というイメージを持ってください。身元保証人(あなた)が申請人の代筆を担当するといえば分かりやすいかもしれません。
あなたからどう見えたかではなく、申請人(来日している外国人)側に立って、考えていることや感じたことを記載するよう心がけましょう。
- 日本で暮らす親族の生活状況
- 親族との関係性
上記を踏まえた上で、主にこの2項目について記述していきます。まず、親族訪問である以上は申請人(来日している外国人)の親族1が日本で暮らしているため、当該親族がどういった経緯でいつ頃来日し、今はどのように生活しているのかを簡潔に記載しておきましょう。
1 多くのケースでは、この親族が短期ビザ取得時の「招へい人」に該当します。
加えて、案件によっては申請人(来日している外国人)と当該親族(招へい人)との関係性にも触れておき、思い出のエピソードなどを挿入するケースも想定されます。仮に姉妹関係の申請人を招待したのであれば、親族間の仲の良さが分かるような話を紹介しておきましょう。
(5) 来日に至った経緯
申請人が短期ビザを取得し来日するまでの経緯を記載します。
何かしらの目的・理由があって来日しているわけですから、申請人とコミュニケーションを取りながら、何のために・いつ頃来日したのかをありのまま記述してください。
直近の申請データと照合される可能性も考えられるので、短期ビザ取得時の来日目的・理由からはなるべく離れないようにしましょう。
(6) 来日後の行動
申請人の日本での活動内容について具体的に記述していきます。育児の面倒や家事のお手伝いなど、これまでに申請人が行ってきたことを列挙してください。
(7) 延長を希望する根拠
来日後の行動に触れながら、このまま申請人が帰国してしまうと良からぬ状況を招いてしまう点について主張・立証を重ねていきます。
上記のような事情があればそれを記述し、申請人の目線から自身(申請人)が引き続き滞在するべき根拠をアピールします。また、許可が下りた際の行動予定についても記載しておきましょう。
なお、このセクションも“あなた”ではなく“申請人”が主語になるため、保証人(あなた)自身の希望だけではなく、申請人の意見もきちんと汲み取りながら作成にあたってください。
(8) 身元保証人の情報
このセクションでは、申請人の日本滞在中の面倒を見る身元保証人(あなた)についての情報を記載していきます。
- 保証人の氏名
- 職業/勤務先
- 収入状況
上記3点が記述できていればベターです。
なお、会社員だけでなく、経営者や会社役員、個人事業主、公務員など様々な職種の方が身元保証人になり得るので既定の書き方は存在しませんが、保証人が引き続き滞在費等を負担してくれる旨の記述は押さえておきましょう。
最後に、締めくくりの言葉(今回の申請をよろしくお願いします)を添えればひとまず理由書としての体裁は整います。
まとめ
- 主格(主語)は申請人で作成
- 延長を希望する根拠を中心とした文章展開
- 状況によっては別途嘆願書などを添付
今回紹介した書き方はあくまでも一例に過ぎません。申請人と親族の関係性や、申請に至った背景によって審査官がチェックするであろう項目も変わってきます。
また、申請すれば必ず許可がもらえるわけではありません。この記事の導入部で紹介したとおり、短期滞在の延長・更新は特別な事情がない限り許可されません。
上記のような理由では申請自体を断られる可能性もあります。ご自身で手続きを進めていく場合は、一度管轄の入国管理局へ問い合わせるのもひとつの方法です。
また、分量に関しては1500~2000字あたりがひとつの目安になります。あまりだらだら書き過ぎると申請の核心がぼやけ、また担当官の心証2も悪くなるので、A4サイズで2~3枚におさめるのがスマートです。ご家族でよく話し合いながら作成に取り掛かってください。
2 審査官が形成する主観的な認識や確信のこと