短期ビザは、観光以外にもあらゆる場面で利用できます。商用・ビジネス目的であっても状況次第では短期ビザを申請でき、俗に短期商用ビザと呼ばれるものに該当します。
ただ、申請にあたっては注意事項があり、判断を誤ると不法就労助長罪が成立し得ます。
この記事の目次
短期商用ビザのおさらい
短期商用ビザは商談や打ち合わせ、座学研修などに代表される、実務を伴わない活動のために設けられた短期滞在ビザの一類型です。
一般的な仕事はできない
法律上、短期滞在ビザ(短期商用ビザ)では、日本国内において収入を伴う事業を運営する活動や報酬を受ける活動が認められません。
つまり、短期滞在ビザでの仕事・アルバイトは一切禁止されています。
働く場合は就労ビザが必要
- 従業員として雇用する
- 日本で会社を経営する
上記のような活動を予定している場合は、別途就労ビザ1を検討・申請します。
商用・ビジネス目的といえども、現場に出て業務を行い、対価として給与を得る活動はできないことを念頭に置いてください。
短期商用ビザの条件
短期商用ビザの申請時にチェックしたい3つのポイントを紹介します。
- 給与などの報酬を渡さない
- 労働と判断されない活動
- 受入先の企業が利益を得ない
給与などの報酬を渡さない
繰り返しますが、短期ビザではいかなる理由でも報酬2を支払えません。日本に滞在する期間の長さや金額の多寡も関係ありません。
したがって、給料/給与の授受が発生しない活動であることがひとつめのポイントです。
実費の負担はOK
日本側の企業が渡航費や滞在費、宿泊費などの実費を負担することは差し支えないとされています。
労働と判断されない活動
「実務を伴わない活動」と「タダ働き」では意味が異なります。
短期商用ビザでは労働自体が認められないので、たとえ無報酬であっても、ライン作業や店頭での給仕・接客体験を目的とした来日は、その活動自体が労働とみなされる可能性があります。
具体的な事例
- 飲食店のホール・キッチンスタッフ
- 工場におけるライン作業
- 宿泊施設での清掃作業
- 接客・レジ打ち
- 農業の実務研修
これらの活動では、仮に金銭の受け渡しがなかったとしても、また研修という名目だとしても、許可を得るのは難しいと考えられます。
見込みのあるケース
- 見込み顧客との商談及び展示会の見学
- 提携先への技術的指導・知識共有
- 現地採用者との懇親会・オリエンテーション
- 国際シンポジウムのゲストスピーカー
- 製品や設備の保守・メンテナンス
一方で、これらの招へい目的であれば、実務を伴わない活動と判断される傾向にあるため、短期商用ビザが発給される可能性も高いといえます。
保守・メンテナンスの補足
保守やメンテナンスを目的として来日する場合は、当業務が海外業務の一環として実施されることが求められます。
平たくいえば、日本国内で行う活動は海外のメインの業務に対するサブの業務でなければなりません。
受入先の企業が利益を得ない
昨今は業務も複雑になり、労働の線引きが曖昧になりつつあります。そこで、3つめのポイント「日本側の企業が利益を得るかどうか」が短期商用ビザを検討する上で参考になります。
ケーススタディ
上記の内容で短期商用ビザを申請すると仮定します。
- 従業員と一緒に仕事用のデータを作成する
- 練習用のデータを用いて操作方法を学ぶ
仕事用のデータを作成する
1の場合は、実際に完成データが納品された場合、招へい元の会社に売上が立ちます。
つまり、企業内研修とはいえ、会社の利益に少なからず貢献する可能性があります。
このケースでは、会社側は従業員と同じ業務をさせているにもかかわらず、当外国人に対して報酬を支払っていないという図式になり、実質的な労働ではないかと判断され得ます。
練習用のデータを用いる
一方で、2の場合は成果が市場に出ないので、単純計算で会社は人件費分損をしています。
その代わり、研修に参加した外国人はスキルを習得し、さらにレベルの高い業務に取り組めるので、労働ではない正当な研修に相当し得ます。
まとめると
以上のように、受入先の企業が外国人を招へいした結果、金銭的な利益を得るのかどうかを考えることで、短期商用ビザの該当性がイメージしやすくなります。
報酬の例外について
例外的に、国際シンポジウムやパネルディスカッションでの登壇・講演目的などで招待する場合は、当活動に対する謝礼金が一部認められます(入管法施行規則第19条の3)。
ただこのケースでも、業として行うもの3ではない講演や講義、イベントへの参加などに限定される点には注意が必要です。
まとめ
- 報酬の受け取りがない
- 労働と判断される活動内容ではない
- 受入先の企業が金銭的利益を得ない
上記3点をクリアしていれば、短期滞在ビザ(短期商用ビザ)を検討するべきといえます。