日本側から招へい人・身元保証人を立てて、外国籍の家族や親族の短期滞在ビザを取得するには、招へい理由書と呼ばれる書類を準備しなければなりません。
そして、当事務所はビザの許可率を高めるため、招へい理由書別紙の作成を推奨しています。

この記事の目次

招へい経緯書のおさらい
招へい理由書の別紙(招へい経緯書)とは、文字通り招へい理由書に記載する内容をより詳細に記した説明書のことをいいます。
招へい経緯書の根拠

招へい理由書内に下記の記載があり、この別紙のとおりという記述が経緯書を作成する根拠といえます。
今回招へいするに至った目的、経緯の詳細について記入してください。本欄に記入しきれない場合は別紙のとおりと記入し、別紙を作成してください。
別紙の書式はある?

外務省や各国大使館で招へい経緯書の書式は公表されておらず、字数やレイアウトに関しても詳しい案内はありません。
つまり、何もない真っ白の状態から自分で文章を組み立てていきます。
経緯書を作成する前に

招へい理由書の下から2番目の欄には、必ず別紙(招へい経緯書)のとおりと記入しておきましょう。
これで下準備はOKです。
招へい経緯書の書き方

実際に提出する理由書別紙の見本です。タイトルは招へい経緯書になっていますが、招へい理由書の別紙であることが分かれば何でも構いません。
1から8まで番号をふっているので、順番に見ていきましょう。

文書作成ソフトは“Microsoft Word”や“Googleドキュメント”を使用してもOKです。
英語やその国の言語で記載する必要はありません。日本語で作成してください。
1. タイトル・作成日・申請先・氏名

タイトルと作成日は割愛しますが、ここで重要になるのは申請先(提出先)です。一部の国・地域1では、来日する親族の居住地によって管轄の大使館・総領事館が異なります。

仮にミャンマー在住の親族を招へいする場合は「在ミャンマー日本国大使殿」と記載します。
代理申請機関について
中国,フィリピン,ベトナム,スリランカなどの一部国・地域では代理申請機関2を経由して申請するため、書面上の申請先と実際の提出先が異なります。
2. 最初に申請概要を記載

冒頭に書くべき内容は、今回の申請概要がひと目で把握できるようなアウトラインです。
- 招へい人(招待する人)は誰か
- 申請人(来日する親族)は誰か
- 招へい人との関係(親・兄妹・叔父伯母など)
- 短期滞在査証申請を行うこと
上記4点を明記した上で、招へいに至った経緯を次の段落から説明していきます。
例文・サンプル
分量はどれくらいがベター?

各案件にもよりますが、経緯書の分量は「A4用紙2~3枚」がひとつの目安になります。
「1枚に収めるのが良い」という決まりはありません。もちろん、単純な観光や育児サポートなどが目的で、それ以上書くことがなければ1枚にまとめてもOKです。
3. 書き出しは在日親族の在留状況

在日親族3がこれまでにどういう過程を経て日本で暮らしているのかを記載します。
- 結婚ビザで来日して今は日本国籍(帰化)
- 留学ビザで来日して今は就労ビザ
- 結婚ビザで来日して今は永住ビザ
- 就労ビザで来日して現在に至る, etc.
個々のケースによって異なるので、時系列に注意しながら簡潔に伝えていきましょう。
結婚ビザを持って暮らしているのであれば婚姻時期や家族構成、就労ビザであればどこの会社に勤務しているのかなど、基本的な情報は明記しておくのがベターです。
4. 親族との交流過程

申請人(来日する親族)と在日親族がどのように親睦を深めてきたかを記載します。ここで注意したいのは、事実関係のみに言及する点です。

親族訪問ビザの申請では、招へい経緯書のほかに出生証明書(Birth Certificate)や戸籍謄本などを添付するため、上記の情報は各資料から把握できます。
つまり、公的書類からは読み取れない、親族だけが知るエピソードや普段の交流頻度などを軸にして記載内容を検討するのがポイントといえます。
なぜ交流過程の記述が大切なのか

親族といえども、交流の過程が見えなければ、審査上マイナスになります。
就労を目的として親族訪問ビザを取得し、そのままオーバーステイや不法就労で検挙される方が後を絶たないため、関係性が不透明なほど、審査では不利になります。

上記をアピールするため、現在も交流があることや親族間の絆の強さを記述しておきましょう。
5. 招待の目的・理由

来日してから何をするのか、何のために招待するのかを明記します。

記事を書いている私も同意見ですが、なるべく個別具体的に記載しましょう。
- 観光旅行
- 育児の手伝い
- 出産前後のお世話
- 自宅で団らん, etc.
いろいろな目的が想定されますが、ここも経緯書作成の中では重要な項目になります。どれだけ親族間の結びつきをアピールしても、来日目的が伝わらなければ本末転倒です。
よくあるケース


しっかりと目的を明記した上で、その理由を伝えていきましょう。
6. 滞在期間・日数

申請人(来日する親族)の希望滞在日数を記載します。航空便のチケットを予約している場合は、入国日や出国日も記載しておけばより親切です。
滞在日数に関しては、15日・30日・90日間の3つの枠に振り分けられてビザが発給されることを念頭に置いてください。
その他ポイント
5で記載した滞在予定の詳細についても記述できればベターです。
観光旅行が目的であれば、神社仏閣をメインに巡るのか、あるいは温泉やテーマパーク、ショッピングが中心になるのかなども伝えておきましょう。
7. 身元保証人の資力

この項目では、身元保証人の収入状況について記述していきます。下のケースであれば通常、夫が身元保証人を担います。
- 外国人妻専業主婦
- 日本人夫会社員
身元保証人の組み合わせ

仮に外国人妻にも一定の収入があれば、妻が身元保証人になってもOKです。また、少し特殊な方法になりますが、身元保証人を在日親族と日本人のふたりで担うことも可能です。
血縁関係のない友人でも保証人になれますが、審査上不利になる傾向があります。
記載する項目
- 身元保証は誰が担うか
- 直近年度の年収額
- 申請人の滞在費や帰国旅費を保証する旨
記載方法は多岐にわたるので決まった書き方はありませんが、このような内容が記述できればOKというイメージを持ってください。
滞在中の金銭面をサポートできると大使館・領事館が判断すれば、許可率はぐっと上がります。
8. 結び

- 申請人の日本滞在中は招へい人/身元保証人が全責任を持つこと
- 締めくくりの言葉(今回の申請をよろしくお願いします)
最後にこれらの文章を添えれば、ひとまず招へい経緯書としての体裁は整います。
例文・サンプル
以上の事情をご勘案いただき、今次申請に格別のご配慮を賜りますようお願い申し上げます。
経緯書例文の全文コピペに注意

色んなWebサイトで親族訪問ビザの経緯書は公開されていますが、全文のコピペは避けてください。
例文や記載例として公開されている以上は、誰でも閲覧や文章の引用が可能になります。そのため、まったく同じ経緯書が同じ管轄大使館・総領事館に集まることも想定されます。
同一の経緯書はない

こうなってしまうと、誰がオリジナルの作成者か判断がつかなくなるので、申請内容に疑いがあるとして不許可を言い渡される可能性もゼロとは言い切れません。
親族訪問ビザ申請において、まったく同じ経緯書は存在せず、必ずどこかで個別の追記・修正が求められます。例文は参考程度にとどめ、なるべく自分の言葉で伝えていきましょう。
超長文も避けましょう

冗長に書き過ぎると、招へい目的の核心がぼやけてしまいます。
当事務所でも、オーバーステイ歴や不法就労歴などの特殊な案件を除き、短期ビザの経緯書で5~6枚を超えることはありません。
担当官の心証4も悪くなる傾向にあるので、特別な事情のない限り、超長文は控えましょう。
まとめ
- 招へい人と身元保証人を明確に
- 交流の過程や時系列を意識した文章展開
- 滞在日数や行動内容も忘れずに明記
今回紹介した書き方はあくまでも一例です。個別の申請内容や親族の遠近関係(親等)によってポイントになる項目も変わります。