海外で暮らす友人や恋人、親族を短期間(90日間以内で)日本へ招待するには、短期滞在ビザという査証を現地の大使館や総領事館へ申請しなければなりません。
そして、当事務所では下記のようなことを相手から言われたという相談をよくお受けします。


- なるべく大金を海外に送りたくない
- このまま消息不明になるかもしれない
- 詐欺かもしれないと考えると躊躇する
- でも彼女・彼がそんなことをする人とは思えない
仮に詐欺だったとしても、半年~1年程時間をかけるケースも多いため、相手とのやり取りをたどってみても、騙されたのかどうかを判断するのは困難です。

この記事では、短期滞在ビザの保証金制度や詐欺、海外の業者さんをテーマに解説しています。
この記事の目次

短期滞在ビザの保証金とは
保証金とはその名の通り、申請人1の滞在費用等を担保するために準備する金銭を指します。
具体的には、冒頭に出てきた「金融機関から発行される数十万円相当の残高証明書」などが該当します。そのほか、不動産や株式などの金融資産が確認されるケースもまれにあります。
申請人主体で申請するケース

申請人が自分で渡航費や滞在費を負担して、直接現地の日本大使館等へビザを申請する場合は、保証金を有している証明として「残高証明書」を提出するケースが多いです。
代理店経由で申請するケース

この場合、保証金の預け先は現地(海外)にある旅行代理店となります。個人観光・団体観光などの名目で申し込む際は、旅行会社がいわば保証人となり、短期滞在ビザを申請します。
保証金の準備はとても大変
このように、申請人が自力でビザを取得しようとすると、いずれの方法でもそれなりのお金が必要になります。
そこで、申請人が機転を利かせて、日本側の協力者から送金してもらい、そのお金を口座に入れた状態で短期ビザを申請しようとしているのが、冒頭の会話になります。

簡単にいうと、働いて貯金するより日本から送金してもらったほうが早いということです。
理屈としてはあり得る

ただ、限りなく黒に近い事例が散見されるのも事実です。
次の章では、あなた側でできるチェック方法について説明していきます。
ロマンス詐欺の簡易チェック
相手さんの情報をできる限り収集しましょう。
氏名やメールアドレスで検索

まずは相手の氏名やメールアドレス、電話番号などを検索にかけてみましょう。
まれに過去の被害者が情報を公開している場合があります。
画像検索を利用する

相手さんが送ってきた写真を検索にかけてみましょう。念のため複数枚の検索をおすすめします。
自撮り画像のほか、家族や友人と写っていると思われる写真を検索すると、まれに別人のSNSアカウントが引っ掛かります。
この場合、連絡を取っている相手が写真の本当の所有者なのか、それとも勝手に他人の写真を拝借しているのかどうかを、あなたが見極めることになります。
送付資料をよく見る


相手から航空券の画像が届いたとします。実はこの画像には2ヵ所、怪しいところがあります。
1. 航空会社と便名の相違
画像右上の「Lufthansa」は「ルフトハンザドイツ航空」を指します。
そして左下の赤枠には「AF291/1652」の便名が記載されています。AFはフランスにある航空会社「エールフランス航空」に割り当てられたコードです。

2. eチケット控えではない
現在はほとんどの航空会社がeチケット2を導入しています。そのため、チェックインを終える前に搭乗券を所持している時点で不可解といえます。
ちなみに、これは実際に海外から送られてきた画像です。

その他偽造の可能性が高い箇所

1は“HND-FUK”だけ光の反射を受けておらず、2は周りの文字と書体が異なっています。
海外の業者やブローカーについて
弁護士さんや行政書士だけでなく、海外にも申請書類を作成する業者さんは存在します。
もちろん、真面目に営業されている優良なエージェント/業者はたくさんあります。しかし、勝手に偽造・変造書類を作って強引に許可を得ようとする人たちもいます。

仮に審査官の目をすり抜けビザを取得できたとしても、申請データは大使館等に残ります。
次回以降の申請で虚偽申請が発覚すると、短期ビザに限らず、配偶者ビザ申請や永住申請においても不利益を受けることになります。
保証金が必要な理由
観光ビザで上陸した外国人は一切のお仕事・アルバイトが禁止されます。

観光ビザでの就労はれっきとした法律違反です。
そのため、申請時点で滞在中に困らない程度のお金を持っていることが許可を得るための最低条件となります。滞在費がなくなったから稼いで帰るといった行動は認められません。
保証金なしでビザを取得するには
短期滞在ビザには複数の申請方法があり、必ずしも保証金は求められません。
日本側で招へい人・身元保証人を準備すれば、申請人(外国人)側の保証金は一切不要です。
申請人が無収入であっても、また口座残高がない場合であっても短期ビザの取得が狙えるので、海外送金を避けたい人にとっては十分検討に値します。
まとめ
- 海外側主体の申請では残高証明が必要
- 詐欺が不安なときはとにかく調べる
- 日本側から招待すれば保証金が不要
相手を疑うことは基本的に失礼にあたるので、ある程度の駆け引きが必要になります。
当事者ではないので的確なアドバイスはできませんが、ことビザ申請においては海外側主体で取得を目指すのか、日本側から招待してあげるのかを慎重に検討してください。