海外で暮らす交際相手や友人、親族を短期間(90日間以内で)日本へ招待するには、短期滞在ビザという査証を現地の大使館や総領事館へ申請しなければなりません。
そして短期ビザの申請にあたって、会社役員/取締役の方が招へい人や身元保証人を担う場合は、会社員が招待する一般的なケースと異なり、ご自身の状況に合わせた資料準備が求められます。
この記事では、会社役員や経営者の短期滞在ビザ申請をテーマに解説しています。
経営者・会社役員の必要書類
発行できる資料・できない資料についてチェックしましょう。
在職証明書は提出できない
中国やベトナムに代表される一部の国・地域では、短期ビザ申請の必須書類として在職証明書1を指定している大使館・総領事館が存在します。つまり、その証明書がなければ原則、申請自体を受け付けてくれません。
サラリーマンや契約社員、公務員の方であれば勤め先の会社(役所)から発行してもらうことになりますが、取締役や経営者の場合はそれができません。
なぜ?
自分で自分が代表者を務めている旨の証明書を作成しても、その証明書には信憑性がありません。紙に1,000と書いて「これは千円札と私が認めました」と言っているようなイメージです。
在職証明書に限った話ではありませんが、信憑性のない書類は何枚提出しても意味がありません。事実確認の取れない書類を提出すればするほど、審査官の心証2は悪くなります。
法人登記簿謄本で代用
在職証明書が準備できないのであれば、代用可能なその他の書類を提出するしかありません。そして、その代用可能な書類とは主に以下のふたつを指します。
- 履歴事項全部証明書
- 現在事項全部証明書
登記簿謄本(登記事項証明書)を添付することによって、記載されている商号や本店所在地、役員に関する事項などから、招へい人ないし身元保証人の在職状況を立証していきます。
報酬額・収入額について
昨年度の収入額も改めて確認しておきましょう。
役員報酬の設定額に注意
ほとんどの会社役員は、税務上損金扱いとするため毎月同額の報酬を受け取っているかと思います(定期同額給与)。また社会保険料の負担減などを意識して、あえて報酬額を低額に設定している方もおられます。
ただ短期滞在ビザの取得にあたって、報酬額を意図的に下げている方は審査上かなり不利になってしまいます。大使館・総領事館の審査官は、会社内の役職や事業内容よりも個人の純粋な収入額を重視する傾向にあるからです。
仮に報酬を月額10万円に設定している役員が身元保証人になった場合は「年収120万円の人」として審査されます。絶対に不許可になるとまではいえませんが、年収120万円の金銭的保証力では厳しい審査になるでしょう。
住民税の滞納・未納について
収入額と直接の関係はありませんが、住民税の納付状況にも注意する必要があります。
報酬額から天引き(特別徴収)していればOKですが、普通徴収3のため納付を忘れてしまい、結果的に市/区役所に滞納者として記録されると審査上不利な扱いを受ける可能性があります。
審査において必ずしも納税証明書の添付は求められませんが、各国にある大使館等から日本の外務省へ情報照会がかかる場合もあります。可能性は非常に低いですが、できる限り住民税の滞納に関してはクリーンな状態にしておくことをおすすめします。
まとめ
- 在職証明書は法人登記簿謄本で代用
- 住民税は普通徴収の納付忘れに注意
- 報酬額が低い場合は別途保証人を検討
この記事で紹介している項目は、サラリーマンの方にとっては全く関係ありません。
会社経営者や役員の方が短期ビザを申請する際は、会社員・公務員が申請する以上に複雑な段階を踏むことになります。