海外で暮らす交際相手や親族、友人を短期間(90日間以内で)日本へ招待するには、短期滞在ビザという査証を現地の大使館や総領事館へ申請しなければなりません。
そして、オーバーステイ歴・不法滞在歴のある外国人が再度ビザを申請する場合、通常に比べてかなり厳格な審査が行われます。
この記事では、オーバーステイ/不法滞在歴のある外国人の観光ビザ申請を解説しています。
オーバーステイとは
一般的に、オーバーステイは不法残留ともいわれ、「在留期限を経過してもなおビザを更新・変更することなく日本に残留する外国人」が不法残留者に該当します。
もちろん、この行為は法律違反です。
オーバーステイの例
- 留学生が退学後もアルバイトを続けた
- 技能実習生が実習先から抜け出した
これらのケースもオーバーステイになる典型例です。
一度でも不法残留の過去があると、短期ビザの審査は非常に厳しくなるため、婚約者や親族であっても許可を得るのは難しくなります。
上陸拒否期間とは
ざっくり1年・5年・10年の3つに分かれます。
日本に入国できない期間のこと
日本から不法残留等を理由に退去強制された者や出国命令を受けて出国した者は、入管法の規定に基づき、原則として一定期間日本に上陸することはできません。
[入管庁Webサイト抜粋]
上陸拒否の期間中は短期滞在ビザを申請できません。申請が可能になるのは上陸拒否期間が経過したあと1になります。
そして、上陸拒否期間は主に1年間・5年間・10年間の3つに分けられます。
1年間の上陸拒否
- 出国の意思をもって自ら入国管理官署に出頭したものであること
- 不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと
- 窃盗罪等の一定の罪により懲役又は禁錮に処せられたものでないこと
- 過去に退去強制されたこと又は出国命令を受けて出国したことがないこと
- 速やかに本邦から出国することが確実と見込まれること
これらすべてを満たしている場合は、出国した日から1年間の上陸拒否が言い渡されます。
まとめると、初めてのオーバーステイで、かつオーバーステイ以外の罪を犯していない状態で、自分から入国管理局(在留管理局)へ出頭した外国人であれば1年間の制限がかかります。
お相手からこのような回答が返ってくれば、出国命令を受けたことが分かります。
5年間の上陸拒否
- 入国管理局や警察の摘発を受けて発覚した
- 過去に出国命令や退去強制を受けていない
これらに該当する外国人は、出国の日から5年間の上陸拒否が言い渡されます。
自分から出頭/自首せずにオーバーステイが発覚した場合は、退去強制・退去強制手続きと呼ばれる処分により出国します。
摘発されるケースは様々で、たまたま職務質問を受けているときに発覚した事例のほか、勤務先が摘発された際に本人の不法残留が判明した事例もあります。
このような回答が返ってくれば、最低5年間は入国できないと考えておきましょう。
10年間の上陸拒否
- 以前にもオーバーステイで摘発されている
- 過去に出国命令を受けたことがある
再度オーバーステイが発覚した場合は、出国の日から10年間の上陸拒否が言い渡されます。
この場合は極めて悪質だと判断される傾向にあり、許可率は前項の外国人に比べてさらに低くなります。不法残留を繰り返すほど、可能性は0に近づいていきます。
オーバーステイとパスポート
相手の記憶が曖昧なときはパスポート2もチェックしましょう。
赤枠で囲ったような数字が手書きまたはスタンプで記録されている場合があります。
これらの数字はそれぞれ法律の条文を表しており、「55-3(55の3)」は出国命令に関連する条文(入管法第55条の3)、「52-4(52の4)」は退去強制に関連する条文(入管法第52条4項)を指します。
- 55-31年間の上陸拒否
- 52-45年/10年の上陸拒否(長期上陸拒否含む)
これを踏まえて、複数回オーバーステイしているかどうかを確認すれば、申請人3のおおよその上陸拒否期間を導くことができます。
作成・添付するべき書類
反省文や嘆願書などの準備をおすすめします。
実際の申請では、外務省や大使館が案内している書類のみで反省を伝えることは困難です。
そこで、当事務所は別途反省文や嘆願書の作成を推奨しています。
反省文は申請人(来日する外国人)の目線で、嘆願書は招へい人(あなた)の目線で作成するのが望ましいですが、ご自身で作成される場合は以下の項目を意識してください。
- 不法残留に至るまでの詳細な時系列
- なぜ不法残留をしてしまったのか
- 過去の過ちについて反省していること
- 今後は二度と不法残留をしないこと
書式に指定はないので、手書きでもパソコンで作成してもOKです。招へい経緯書に直接組み込むかたちで整えるのもひとつの方法です。
まとめ
- 100%不許可になるわけではない
- 申請は上陸拒否期間を経過してから
- なるべく反省文・嘆願書を添付
通常、申請が受理されてから結果通知までの期間は1週間程度ですが、オーバーステイ歴のある場合は審査期間が延びる傾向にあります。
また審査の途中で面談が実施されるケースもあるので、申請人自身がきちんと過去の過ちや罪の重さを理解しておくことが大切になります。